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小林 謙祐*; 安江 歩夢*; 諸岡 聡; 兼松 学*
コンクリート工学年次論文集(DVD-ROM), 44(1), p.208 - 213, 2022/07
異形鉄筋の表面形状がコンクリートとの付着性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、引抜試験および中性子回折法による鉄筋応力測定を実施した。実験結果より、引抜試験における付着応力-自由端すべり量曲線では、表面形状の違いによって大きく異なる結果となった。一方、鉄筋応力の測定では、各水準の応力分布に差異は見られなかった。したがって、鉄筋に自由端すべりが生じる条件下においては、鉄筋の表面形状が付着性能に影響を及ぼすことが推察された。
伊藤 成胤*; 向井 智久*; 鈴木 裕士; 南部 禎士*; 鈴木 淳一*; 松沢 晃一*; 衣笠 秀行*
日本建築学会技術報告集, 27(65), p.99 - 103, 2021/02
本研究では、意図的に未充填部を有するエポキシ系接着剤を用いたあと施工アンカー試験体、および高温加熱により空隙部の進展が確認されたあと施工アンカー試験体を対象に、中性子イメージングによる空隙部の定量評価を行った。まず、中性子計測により得られた3次元画像のCT値に着目した未充填部長さの評価手法を提案した。次に、加熱した空隙部が存在するあと施工アンカー試験体に対して、上述した評価手法により接着剤の未充填部の位置を評価した結果、試験体を切断し得られた実際の空隙部位置にほぼ一致することを確認した。さらに、空隙部とその周辺部のCT平均値を比較したところ、空隙部ではその数値が小さくなること、また、CT値そのものにより劣化空隙部を定義することは難しいが、空隙部とその周辺部のCT値の相対関係より、空隙部を特定できることを確認した。
諸岡 聡
保全学, 19(1), p.29 - 34, 2020/04
中性子回折法は中性子の優れた透過能を生かすことで、数十mmメーターオーダーの材料深部の応力・ひずみを非破壊で測定できる唯一の測定技術として知られている。特に、ミクロ応力に起因する弾性ひずみ等の情報を得るうえで、中性子回折法は有効な手段であり、ミクロ組織因子のバルク平均と力学特性との関係を求めて、材料開発や既存材料の信頼性を検討するのに適している。このように、中性子回折法は、従来の残留応力に基づく機械部品等の健全性評価だけでなく、材料の力学特性や機能性向上を目指した材料工学研究などへの応用が期待されている。本稿では、中性子回折法によるひずみ測定原理などの基礎を説明するとともに、代表的な鉄鋼材料について中性子回折法によるその場測定により行われた材料評価研究の一端を紹介し、本手法の将来を展望する。
鈴木 裕士
保全学, 19(1), p.24 - 28, 2020/04
残留応力は、工業製品の製造工程における機械加工,塑性加工,接合,組み立てなどに起因して発生し、機械部品の寸法精度や、その疲労強度などに影響することが知られている。しかしながら、残留応力は直接、目に見ることはできないために、どこにどれだけの大きさの残留応力が発生しているかを把握することは難しい。そのため、何らかの方法により、その残留応力を定量化し可視化することが必要になる。中性子回折法は、中性子線の電荷を持たない特徴を生かして、鉄鋼材料などの金属材料に対し、材料表面から数十mm深さの領域の残留応力を非破壊で測定することができる。本稿では、中性子回折法による残留応力測定について、主にJRR-3のRESA-1を利用した残留応力測定技術を中心に、角度分散型中性子回折法による残留応力測定原理について簡単に解説するとともに、これまでの応用例の紹介と将来展望について述べる。
上野 一貴*; 鈴木 裕士; 小山 拓*; 西尾 悠平*; 兼松 学*
コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集(CD-ROM), 18, p.647 - 650, 2018/10
本研究では、中性子イメージング技術と画像処理技術を組み合わせることで、コンクリート内部に分散したガドリニウムマーカの動きを精度よく評価できる技術を開発した。次に、中性子イメージング技術と中性子回折法を組み合わせて、鉄筋コンクリートの引張載荷時の付着劣化挙動を評価した。その結果、中性子イメージング技術により得られるコンクリートの変形挙動と、中性子回折により得られる鉄筋の応力分布を比較・検討することで、鉄筋コンクリートの付着劣化挙動の評価が可能になることを示した。
鈴木 裕士; 楠 浩一*; 兼松 学*; 向井 智久*
コンクリート構造物の非破壊検査シンポジウム報文集,6, p.343 - 348, 2018/08
中性子回折法は材料深部の応力を非破壊・非接触で測定できる手法として良く知られている。われわれは、世界で初めて鉄筋コンクリートの付着力評価に中性子回折法を応用し、コンクリートに埋設された鉄筋の付着応力度分布の非破壊・非接触測定に成功した。これまでに、鉄筋コンクリートの定着力や曲げ付着力の評価、また、ひび割れや鉄筋腐食に伴う付着劣化の評価などに応用してきた。最近では、あと施工アンカーの付着性能評価など、新しい施工技術の開発研究にも応用が広がっている。本稿では、これまでに得られた成果を総括して紹介する。
鈴木 裕士; 楠 浩一*; 兼松 学*; 向井 智久*; Harjo, S.
Materials Research Proceedings, Vol.2, p.25 - 30, 2017/00
被引用回数:3 パーセンタイル:70.51(Metallurgy & Metallurgical Engineering)これまでの研究において、コンクリート内部の鉄筋の応力分布を測定するうえで、中性子回折法はひずみゲージ法に代わる新たな測定技術になりうることが示された。本研究においては、鉄筋コンクリート構造の構造力学研究における中性子回折法のさらなる可能性を見出すために、中性子回折法による付着応力度評価の可能性について検討した。中性子回折法により測定した付着応力度分布には、鉄筋とコンクリート間の不均一な付着状態を示唆するいくつかのピークが見られた。この結果は、位置分解能の高い中性子回折法により、鉄筋の節周りに生じる局所的な付着抵抗状態の評価が可能であることを示している。中性子回折法により測定した付着応力度分布は、鉄筋コンクリート構造における鉄筋とコンクリート間の付着メカニズムの詳しい理解につながるものと期待される。
皆川 宣明; 森井 幸生; 盛合 敦; 大友 昭敏; 菊地 賢司
Journal of the Physical Society of Japan, Vol.70, Supplement A, p.517 - 519, 2001/05
アルミニウム合金A6063材を用いて、プラグとリングを設計製作し冷し填めによる境界部に発生する熱応力の内部分散を中性子回折法により測定し、設計値と実測値の比較を行い製作法の評価を行った。その結果設計応力値に等しい応力分布が測定され、標準試料として使用できると判断した。設計により予測された周方向の発生応力は、=280MPaであり、測定値は約150MPaであった。しかし、無ひずみ格子面間隔測定の誤差、及び工作寸法精度の誤差によるものであり、周方向,半径方向の内部応力分布は理論的形状となっている。
皆川 宣明; 盛合 敦; 森井 幸生; 斎藤 徹*
日本材料学会第37回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集, p.220 - 222, 2001/00
中性子回折法によるひずみ測定では=d/d=(d-d)/dによりひずみが求められる。無ひずみ状態における格子面間隔dは材料を熱処理や粉末化して測定を行うが、手間と時間を必要とする。われわれは、一般構造材が、アルミ,鉄をベースとした正方晶系に着目し、ランダムな回転をさせながら中性子回折測定を行うことにより、d(hkl)を行う連続軸回転ゴニオメーターを製作し測定を試みた。その結果、A7075材を粉末化したものを中性子回折法及びX線回折法で測定し得られた格子定数aと開発ゴニオメーターにより測定した結果が10nmで一致し、実用になることを立証できたので報告する。
皆川 宣明; 斎藤 徹; 森井 幸生; 佐々木 敏彦*; 広瀬 幸雄*
日本材料学会第36回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集, p.253 - 258, 2000/09
中性子回折法による残留応力測定では格子面間隔の変化(d=d-d)を回折角の変化から三軸方向のひずみを測定することによって残留応力値を求める。したがって、材料の無ひずみ状態時の格子面間隔dを知ることが重要である。これまではdの測定に関して粉末材を用いてdを測定していた。しかし、アルミ合金等を粉末状態にするには時間と労力がかなり必要となる。そこで、本研究ではd-dを測定するためにランダム回転に近い形態で試料を回転させて得られるdをdとして用いる簡便な方法を開発した。この方法によつて得られる格子面間隔と粉末法によって得られる値とを比較し、ほぼ同じような結果を得ることができたので報告する。
皆川 宣明; 盛合 敦; 斎藤 徹; 田中 啓介*; 秋庭 義明*; 林 眞琴*; 大城戸 忍*
日本材料学会第36回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集, p.263 - 265, 2000/09
中性子回折法により、VAMAS TWA-20で作成したインコロイIN718材両表面にショットピーニング加工を施したRound Robin試料の測定を行い、50~100mの表面深さに残留する応力を測定した。VAMASは国際標準化のためのプロジェクトであり、測定方法、手順等を決めるための一環として各国研究機関で同一試料を持廻りで測定を行っている。その測定手法等を含み、本文中で紹介している。
佐々木 敏彦*; 皆川 宣明; 森井 幸生; 新村 信雄; 広瀬 幸雄*
日本材料学会第36回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集, p.259 - 262, 2000/09
中性子イメージングプレート(IP)は、新しい中性子用二次元検出器である。本研究は工業的利用に対し重要な応力測定技術開発の一環であり応力解析に必要な中性子回折環画像の解析に関する検討を行い、解析ソフトウェアの開発を行った。中性子イメージングプレート用中性子応力測定装置を開発作成し、日本原子力研究所JRR-3Mに設置された残留応力解析用中性子回折装置(RESA)を用いて実験を行い、厚さ2mmの鋼材に対し単軸引張応力を加え得られた画像の解析を今回開発したソフトウェアにより処理し良好な結果を得た。
鷹合 滋樹*; 佐々木 敏彦*; 皆川 宣明; 森井 幸生; 広瀬 幸雄*
日本材料学会第36回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集, p.266 - 271, 2000/09
Fe-Cr/TiNは、分散強化形材料として、優れた耐摩耗性材料として知られている。複合材料の残留応力は構成材料相互間に微視的応力が働き複雑な応力状態となる。介在物を有する材料の応力解析方法には、“Eshalby"の等価介在物法や、“森,田中"の理論による方法により行われる。これらの解析法はX線回折法により実験検証されているが、X線の侵入深さは数10mと極表面近傍であり、自由表面による応力緩和の影響は無視できない。中性子回折法による測定は中性子の侵入深さがFe,Crにおいては波長にもよるがX線に比べ数百から数千倍と深い。内部応力状態及び分散体の平均応力測定が可能である。今回Fe-Cr/TiNを用いTiNの残留応力、変形挙動の解析を中性子回折法が優位な手法である結果を得た。
皆川 宣明; 盛合 敦; 大友 昭敏; Rifai*
日本材料学会第36回X線材料強度に関するシンポジウム講演論文集, p.272 - 275, 2000/09
近隣アジア地域を対象とした原子力安全ワークショップの中性子散乱分野において、残留応力測定を計画している。そのための標準試料としてアルミニウム材によるリングとプラグの冷し填めによる熱応力分布を持たせたものを製作した。製作するに当たっての設計温度の予備測定、プラグ及びリングの表面加工精度、寸法、冷し填め方法について解析するとともに、完成した試料の中性子回折法による応力測定、測定結果の評価を行っている。また、中性子回折測定はインドネシア原子力庁の原子炉に設置された装置を用い行われたことを報告している。
鷹合 滋樹*; 佐々木 敏彦*; 皆川 宣明; 森井 幸生; 広瀬 幸雄*
Proceedings of 6th International Conference on Residual Stressess (ICRS-6), Vol.1, p.41 - 48, 2000/07
Fe-Cr/TiN系焼結複合材は、TiN粒子によって分散強化した材料であり、優れた耐摩耗性で知られた材料である。複合材料内部では構成材料相間で応力が発生し複雑化する。応力解析法としてはEshelly法、Mori-Tanaka法、等があり、X線回折により実験検証が行われていれば、侵入深さが数10mと浅いため、自由表面による応力緩和の影響は無視できない。中性子回折法はX線に比べFe-Crでは数万倍となり、内部の応力状態及び分散体の平均応力が測定可能である。日本原子力研究所JRR-3Mに設置されたRESAを用いて応力測定を行い良好な結果が得られたので発表する。
土屋 佳則; 菊地 賢司; 皆川 宣明; 森井 幸生; 加藤 崇; 中嶋 秀夫; 辻 博史
日本材料学会第49期学術講演会論文集, p.325 - 326, 2000/05
X線回折法では表面数10m深さの内部までしか測定できなかった金属構造物の残留応力も、中性子の持つ浸透能を利用すると数10mm深さまで測定が可能になる。本報告は、中心に穴のあいた矩形断面材料の圧延、曲げ加工に伴う残留応力を中性子回折法により測定し、あわせて計算機シミュレーションによる解析と比較検討した結果を述べる。従来、単純な1次元、2次元応力状態の残留応力を中性子回折で調べた結果は報告されているが、このように3次元応力状態について詳細な測定を実施した例は少なく、結論として中性子回折法の有効性、応用能力が高いことが示された。
井上 和子*; 堀川 武*; 中村 浩*; 新井 利章*; 皆川 宣明; 土屋 佳則*; 森井 幸生; 山口 泰男*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1, 37(10), p.5680 - 5686, 1998/10
被引用回数:2 パーセンタイル:13.54(Physics, Applied)直径8mmのS55C炭素鋼に繰返し応力を負荷した疲労材の内部ひずみ分布を測定し観察した。その結果、表面近傍に引張応力が集中していることが観察できた。この現象は以前から知られていることではあるが、この測定観察結果から、繰返し応力による材料破損は表面より進展することが言える。この測定は、非破壊により内部ひずみ、あるいは応力分布が測定できる中性子回折による測定である。装置は日本原子力研究所JRR-3M原子炉中性子導管に設置された日本初の残留応力解析用中性子回折装置(RESA)である。
鈴木 裕士; 秋田 貢一
no journal, ,
中性子応力測定法は、中性子線の波の性質と優れた透過能を活かすことで、数cmオーダーの材料深部の応力・ひずみを非破壊で測定できるほか、中性子回折法により得られた回折線の変化から、材料中の残留応力測定だけでなく、集合組織や転位密度などのミクロ組織因子を定量的に評価することができる。本講演では、中性子回折法による非破壊応力測定技術について、その特徴や測定原理、また、本測定技術を用いたいくつかの研究応用例について紹介する。
鈴木 裕士; 秋田 貢一; 津乗 充良*; 根崎 孝二*; 篠原 貴彦*; 黒木 博史*; 森田 一郎*
no journal, ,
航空機用ジェットエンジンの圧縮機およびファンブレードにおいて、翼とディスクを一体化したブリスクの採用が拡大している。これは、一体化により軽量化が図られ、また、翼と翼座のすき間からの漏れが防止でき、燃費および性能の向上が達成されるためである。従来、ブリスクは、鍛造材からの削り出しにより製造されてきたが、素材の歩留まりが低いなどの問題から、近年では、線形摩擦接合(Linear friction welding: LFW)の利用が進められている。LFWでは、接合時の急熱急冷プロセスに起因して接合部近傍に残留応力が発生するため、健全性評価のために残留応力の把握が重要である。本研究では、チタン合金のLFW接合試験体における残留応力を中性子回折法によって測定した。その結果、d0分布の妥当性の評価が必要であるが、残留応力のおおよその傾向として、接合部を中心として約5mmの範囲において、L方向に強い引張残留応力分布が発生していること、熱処理によってその残留応力は解放傾向を示すことを明らかにした。
土屋 直子*; 向井 智久*; 楠 浩一*; 兼松 学*; 椛山 健二*; 鈴木 裕士
no journal, ,
建築ストックの有効活用に向け、既存鉄筋コンクリート建物に対して低振動・低騒音のあと施工アンカーによる長期使用のための改修技術の開発が望まれている。その一つとして湿式コア穿孔によるあと施工アンカーがあるが、その付着機構はまだ十分に解明されていない。そこで本研究では、中性子回折法による応力測定技術を用い、3種類の固着剤を用いて埋設されたあと施工アンカーの付着応力分布の測定を行った。その結果、アンカー筋に同じ引張荷重が働いた場合に、アンカー筋の付着応力度分布や残留応力は固着材料により異なることを明らかにした。これにより、中性子回折法があと施工アンカーの付着特性の評価に有効な手段であることが示された。